🌁49〉─9・C─外国人移民を「安くて便利な労働力」と考えるのは誤り。~No.244 ㉜ 

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 2023年8月20日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「移民を「安くて便利な労働力」と考えるのは誤り、移民大国の惨劇に日本も直面するのか
 「不法入国・滞在=犯罪」と「移民」は違う
 世の中では「移民」と「犯罪者」が混同されている。「不法入国・滞在」はその行為自体が「犯罪」である。法律上の正式な手続きを経て日本に居住する合法的な「移民」とは根本的に違う存在だ。
 【写真】少子高齢化=生産年齢人口減少に立ち向かえる日本の技術
 日本に滞在・居住する「外国人」を語るときに、この「区別」を明確にすることはとても重要と考える。
 例えば、「日本人」は素晴らしい。多くの人々が情愛に満ち礼節をわきまえている。だが、とても悲しいことに、その「日本人」の中にも卑劣な犯罪者が存在するのは事実である。
 そのような犯罪者に対して日本政府が厳正かつ公正な処罰を行うことは、日本国民の「安心・安全」を守るために必要不可欠だ。政府が犯罪(者)に対する抑制策を怠ることは、国民に対する背信行為といえよう。
 しかしそれにも関わらず、8月4日、斎藤健法相の裁量で「日本で生まれ育った在留資格のない外国人の子どもについて、親に国内での重大な犯罪歴がないなど一定の条件を満たせば『在留特別許可』を与え、滞在を認める」との方針を発表した。
 もちろん、「子供に罪は無い」という考えは理解できる。また、「今回限り」との説明もされている。法律を杓子定規に解釈するのではなく、「愛情」をもって接することも当然必要だ。
 だが、「今回限り」との言葉が信用できるであろうか? 
 斎藤健法相の裁量措置が前例となってしまえば、「子供だけは日本に在留」するための、家族ぐるみの不法入国を誘発することになりかねない。
 さらには、国会で成立した法律の定める内容を「子供に罪は無い」と「法相の恣意的裁量」で無視してしまえば、「親子を引き離すのは非人道的」だから親の残留も認めるということに結局なってしまうのではないであろうか? 
 外国人に対して「温情」をもって接するのは決して悪いことではないが、その結果日本国民に対する対応がなおざりになり、さらには「日本国民に被害が発生」するのであれば、大問題である。
 外国人生活保護の前例
 例えば、 厚生労働省HPにおいて「5 生活保護における外国人の取扱いについて」という記述がある。
 その冒頭で、「『1.憲法生活保護との関係』 生活保護制度は、生存権を保障する憲法第25条を根源とするものであるが、憲法第25条は『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』と規定していることから、生活保護法も『日本国民のみ』を対象としている」と明示されている。
 日本経済新聞2014年7月18日「永住外国人生活保護認めず 最高裁が初判断」との判決もある。
 しかし、9年前に最高裁判決が出されたにも関わらず、「国際道義上、人道上の観点から」、行政措置として、「行政機関の裁量」で「一定の外国人への準用」がいまだに行われている。
 「国際道義上、人道上」の愛にあふれた措置は悪いことでは無いが、一方で本来憲法によって「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する日本国民」に対しては「塩対応」である。
 1月23日公開「減税で滅んだ国家はない、増税は国家衰退のサインだ」4ページ目「無駄な補助金も同様だ」でも触れた、「護られなかった者たちへ」(筆者映画評論)で描かれているように、救済すべき「日本国民」は今でも冷遇されたままだ。
 また、前記記事で述べたように、救済すべき日本国民から「ピンハネ」し、「食い物」にする組織もほとんど放置されている。
 そのような状況の中で、「日本国民」の救済をないがしろにして「外国人優遇」を続けているのが、現在の日本政府(行政機関)なのである。
 ブラック企業が「外国人労働者」を欲しがる
 合法的な「移民・外国人労働者」も多くの問題を孕んでいる。
 技能実習生は、法律で定められた手続きを踏んでいるが、実態は「実習生」などではなく、「安くて便利で使い捨て出来る低賃金外国人労働者」であるといえる。
 実際、MBS NEWS 2022年11月4日「ベトナム人の犯罪急増『技能実習の闇』...毎年5000人前後が失踪 保護活動者が『モグラさん』と呼ぶ人々の犯罪の根源にある厳しい現実」のような状況が伝えられる。
 世間で「移民・外国人労働者」の必要性が語られるとき、必ず話題に上がるのが「日本人の人材不足」である。だが、「日本人が集まらない理由」が真剣に論じられることは無い。
 建設、建築、介護、福祉、飲食、サービスを始めとする業種において、日本人の採用が困難な理由は概ね「労働条件に対して(賃金を始めとする)待遇が悪い」ことにある。
 人材が足りないのであれば、(日本人に対する)待遇改善、給与引き上げで対応すべきなのに、「安い外国人労働者」をかき集めて経営を行うのは明らかに「ブラック企業」である。
 企業経営者、金融トレーダー、IT技術者等、高給取りとされる職種に比べて「国民生活に必要不可欠」な介護・福祉関係を始めとする職業の賃金はあまりにも安すぎる。
 例えば、給与を2倍・3倍に引き上げてもよいのでは無いかと思う。「そんな無茶な!」という意見があるかもしれないが、それぞれの職種の給与は「労働生産性」と大いに関りがある。
 労働生産性を上げれば、介護、福祉、建設、飲食などの現場の人々が1000万円プレイヤーになることも十分可能だ。
 その事実は、日本の過去の歴史が証明している。
 失われた30年の原因は海外の安くて便利な労働者?
 まず、「日本では賃金が高いから国際競争に負ける」と叫んで、製造業が海外移転した結果どうなっただろうか? むしろ、日本の製造業を中心とする産業の海外流出によって「失われた30年」が生じたのではないだろうか? 
 実際、ものすごい勢いで企業の海外進出が進んだのに、日本人の給与は30年間上がらなかった。むしろ社会保険料などが増えたことにより、実質所得は下がったといえる。
 過去30年間に日本政府や企業が行うべきだったのは、日本産業(企業)の効率化を図り「人件費」に大きく左右されないビジネスモデルを構築することであったはずだ。そのビジネスモデルによって生産性が向上すれば、日本人が喜んで働けるだけの十分な賃金を提供しながら、国内の産業を発展させることができたと考えられる。
 我々は「失われた30年」の原因を、日本内外の「外国人労働者」の問題も含めてよく考えなおすべきだ。海外の「安くて便利な労働者」が国内の「日本人労働者」に与えた影響が余りにも軽視されている。
 結局、「安くて便利な外国人」を手に入れるための移民政策は「工場海外移転」と同じやり方である。(ブラック企業の)経営者が儲かっても、「日本国民」が疲弊する。
 しかも、移民(外国人労働者)は工場の海外移転の場合と違って「(移民受け入れのための)社会的コスト」を負担しなければならない。
 ロイター7月29日「アングル:移民受け入れ拡大のカナダ、経済繁栄は『蜃気楼』か」記事が興味深い。
 移民を受け入れるのであれば、交通機関、住宅、医療面での負担増大、さらには場合によっては「治安コスト」の負担も真剣に検討すべきだ。
 前記記事最後において、ローゼンバーグ氏は、「カナダ経済は1人当たりで見ると横ばい状態だ」と述べた上で、(移民による人口増加によって)「経済の繁栄という蜃気楼を作り出すことはできるが、結局は蜃気楼にすぎない」と鋭い指摘をしている。
かつての人手不足は自動化・ロボット化で乗り切った
 また戦後、中卒者が「金の卵」と呼ばれた時代の人手不足を、日本はロボット化・自動化で乗り切った。
 その詳細は、7月24日公開「IT革命の次は『自動化革命』、少子高齢化=生産年齢人口減少に立ち向かえる日本の技術」冒頭「中卒が金の卵であった時代」で述べた。
 現在の人手不足は、幅広い分野に及ぶ。しかし、7月24日公開「(IT革命の次は『自動化革命』、少子高齢化=生産年齢人口減少に立ち向かえる日本の技術」、昨年8月13日公開「世界の生産年齢人口が減れば、日本のお家芸『自動化』に追い風が吹く」で述べたように、高度に発達した日本の自動化技術は様々な分野に応用が可能だ。
 8月15日公開「既存の住宅は建築の『製造業化』『DX化』で価値激減の運命にある」、昨年7月3日公開「『3Dプリンターの家』で高すぎる日本の住宅は激安時代へ?」、2月18日公開「ヤバすぎる『日本の農業』、じつは『3つの要素』を満たせば『一気に飛躍』する可能性を秘めていた…!」だけではなく、サービス業など多くの分野で「自動化革命」が進んでいる。
 何しろ日本は、自動化・ロボット化のコアである産業用ロボット・センサー市場で50%以上のシェアを誇るのだ。もちろん、工作機械やモーター分野などでの実力も圧倒的だ。
 ただし、帰化人(渡来人)は必要
 もちろん、外国人の受け入れを否定するのではない。
 歴史上、帰化人(渡来人)や明治期のお雇い外人などは日本の発展に寄与した。しかし、彼らは現在で言えば「高度人材」である。
 決して「安くて便利な外国人労働者」ではなかったことについては、しっかりと考えるべきだ。
 欧米の現状を直視すべき
 かつての日本が移民(外国人労働者)に頼らず(頼れず)に、自動化・省力化で乗り切ったのに対して、欧米は「安くて便利な外国人労働者(移民)」に頼った。
 その結果どうなったかは明らかだ。
 ロイター2013年5月26日「焦点:移民大国スウェーデン、暴動で露呈した『寛容政策』のひずみ」のように、すでに10年前にその問題点が報道されている。
 最近でも産経新聞7月2日「フランス、暴動と略奪やまず 10代の移民層の『反乱』 社会の分断浮き彫り」、読売新聞7月4日「フランス暴動から1週間、社会の分断浮き彫り…若い移民系の不満噴出」などの報道が相次いでいるが、これらは氷山の一角に過ぎない。
 また、米国も日本経済新聞8月5日「米NY市と首都、不法移民急増に苦慮 南部の州が移送」を始めとする大きな問題を抱えている。
 日本は移民の「欧米化」への入り口に立っている
 Japan Local Government Centre (JLGC) London の「英国の移民の歴史」は興味深い資料だ。
 英国の人口の14%が外国生まれで、ロンドンに至っては人口の35%を占めているという(日本の総人口に占める外国人の割合は2020年1月現在2.3%)。
 ロンドンでも2011年に黒人男性が警察官に射殺されたことをきっかけで「イギリス暴動」が起こっているが、「英国の移民の歴史」記事中にある1958年のノッティンガム・ノッティングヒル暴動は65年も前に起こった。
 ところが、1945年に第2次世界大戦が終わるまでは、英国の人口における英国外出身者は3%未満と、割合としてはさほど大きくはなかったのだ。現在の日本の2.3%と比較しても大きな変わりはない。
 つまり、現在の日本は78年前の英国と同じ位置にいると言える。それから13年後にロンドンで大規模な暴動が起こっていることを考えれば、これからの「移民政策」は日本の将来を大きく左右するといえよう。当然「国民的議論」が必要だ。もちろん、その際には「外国人労働者や移民を受け入れる『(治安を含めた)社会的コスト』」も明示されなければならない。
 その点で、冒頭の斎藤健法相の裁量による「独善的行為」を国民は許してはならないと考える。
 大原 浩(国際投資アナリスト)
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