🧣17〉─1─ヤンキーも逃げ出す「超おバカ社会」がニッポンにやってくる。〜No.50No.51No.52 ⑮ 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 iRONNA編集部
 ついに始まった人口減少クライシス
 96万2607人。この数字は、過去5年間で減少した日本の総人口である。かたや、昨年生まれた子供の数は、1899年の統計開始以来初めて100万人の大台を割った。2つの数字は、日本が本格的な人口減少時代に突入したことを意味する。私たちは未来を揺るがすこの危機とどう向き合えばいいのか。
 徹底的な悲観論で説く
 2014年7月、佐賀県唐津市で行われた全国知事会で各知事と意見交換する日本創生会議の増田寛也座長(前列左端)
 JR水戸駅北口から続く商店街もシャッターが目立ち、人通りは少ない=2015年6月(桐原正道撮影)
 ヤンキーも逃げ出す「超おバカ社会」がニッポンにやってくる
 『山田順』
 山田順(ジャーナリスト)
 今年(2017年)になって再び、人口減社会が大きくクローズアップされている。それは、昨年10月、総務省が発表した2015年国勢調査の確定値で、日本の総人口が初めて減少に転じたことが明らかになったからだろう。すでに、住民基本台帳による調査人口は、2008年をピークに減少に転じていた。しかし、今回の発表でそれが決定的になったのである。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口2040年代に1億人を割り込み、2060年に8674万人に減少するという。
 人口減社会に関しては、「楽観論」と「悲観論」が交錯している。楽観論では、人口が減っても経済成長は望める、今後のイノベーションによって生産性が向上すれば経済は維持できるという。日本はその潜在力が十分にあるという。
 しかし、これは少数意見であり、悲観論のほうが圧倒的に強い。人口減少は経済成長を不可能にし、なにより税収減により社会保障とインフラ維持を困難にさせる。日本はこのままでは衰退せざるをえないというのだ。
 日本政府も悲観論の立場で、そのため、なんとか現状を維持できないかという対策を取ってきた。しかし、それは消費税の増税や年金支給額の縮小など、ほとんどが単なる対処療法だから根本的な解決にはなっていない。女性が活躍する社会、高齢者の活用なども同じだ。
 また、成長戦略というのも、成長しそうな分野に税金を投入するという旧態依然たるバラマキだから、ほとんど期待できない。
 かくして、年々、悲観論が強まってきた。
 2年前に元総務相増田寛也・東大客員教授が座長を務める日本創成会議が、2040年には全国の市区町村の半分にあたる896自治体が人口減により消滅の危機を迎えるという予測を発表して以後は、とくにそういうムードになっている。いまのところ、2020年に東京オリンピックがあるということで、悲観的未来は先送りされているが、それは見たくないものは見ないですませたいという心理があるからにすぎない。未来は、まったく明るくない。
 じつは、私も悲観論に立っている。というより、このままだとそうならざるをえないと考えている。そこで本稿では、徹底的な悲観論で、日本の人口減社会の行く末を考えてみたい。
 これまでに私は、人口減社会を扱った本を2冊書いている。1冊は『人口が減り 教育レベルが落ち 仕事がなくなる日本』(2014、PHP研究所)で、もう1冊は『地方創生の罠』(2016、イーストプレス)だ。このうち、後者では、人口減で衰退する地方が、現状ではどうやっても衰退を免れない。アベノミクスで掲げた「地方創生」策は、完全な愚策で、地方の衰退を速めるだけだということを指摘した。
 これまで、日本中で「まちおこし」や「地域活性化」が行われてきた。アベノミクスはこれを言い換えて、「地方創生」としたが、なんら有効な手は打っていない。というか、有効な手、アイデアなどないと言っていい。
 人口減を食い止め、市町村がさびれていく現状を食い止めるには、端的に言って「女性がもっと子供を産む」か「他地域から住民を引っ張ってくる」(移住促進)しかない。しかし、経済が衰退していくなかで、子供を育てることが高コスト、高リスクになる社会では、女性は子供を産まない。
 移住促進と言っても、たとえそれに成功したとしても、それは日本国内の人口移動に過ぎない。国外からの移民ではないのだから、日本全体としては人口減が解消しない。
 現在、日本中で地方創生が行われている。その結果、「ゆるキャラ」が乱立し、「B級グルメ」が全国規模で誕生した。「ふるさと納税」などというバカバカしい制度(税金を右から左に移すだけ)もでき、さらに「地域振興」と称して「プレミアム商品券」というマヤカシにすぎない金券がばらまかれるようになった。
 また、中央からコンサルや代理店が出向き、シャッター通りの活性化案、地方発のベンチャー支援策、移住促進プランなどを提案すると、それに自治体は予算をつけて、かえって財政の悪化を招いてきた。
 これが行き着く先は、一部の「勝ち組」自治体と、多くの「負け組」自治体の誕生だ。全国規模で同じ競争をやれば、必然的にこうなる。そして、負け組自治体からますます人が出て行き、衰退が速まるだろう。2007年に財政破綻した夕張市がいい例だ。
 楽観論者に言わせると、人口減少は一時的なもので、社会の変化により、また人口が増えるときがやってくるという。たしかに19世紀までの歴史ではそうなっている。しかし、それ以後、産業革命と資本主義によって人類人口が爆発的に増え、その結果として、20世紀後半から先進国で少子化が起こった。そして、その最先端を行く日本で人口減少が始まった。
 つまり、今後、同じ歴史は繰り返されない。イノベーションはさらに進み、資本主義は続くのだから、人口減少は止まらないと考えた方がいい。しかも、IT革命、第4次産業革命(インダストリー4.0)が進むなか、もはや人間自体が価値を失いつつある。
 AIとロボットがなんでもやってくれる世の中で、労働力としての大量の人間が必要だろうか。必要なのは労働力としてのロボットであり、頭脳としてのAIだ。この先、シンギュラリティに突入していくなかで、機械が雇用を奪うとすれば、人口が増える理由が見当たらない。
 日銀の「黒田バズーカ」による量的緩和が効かないのも、人口減のせいとも言える。いくらカネを刷って市中に供給しても、使う人間が年々減っている。なにしろ、年間20〜30万人の人口が失われている。これは、中規模の都市が一つなくなるのと同じことだ。
 銀行にしても預金者が減るのだから、もう業務を縮小せざるをえない。金融緩和になど付き合っていれば、確実に破綻する。
 すでに過疎化は進み、鉄道路線、公共交通網は縮小されている。乗客が年々、減っているからだ。そんななかで、整備新幹線だけはまだまだ拡張され、リニア新幹線の建設も始まった。東京−名古屋を1時間ほどで結ぶことに、なにか意味があるのだろうか。それにしてもこのような乗り物にいったい誰が乗るのだろうか。名古屋から東京に通勤する人間が誕生するというのか。
 人口減が進むなか、中央アルプスの地下を乗客がまばらな弾丸特急が走るという未来に、なぜ多額の税金を投入する必要があるのだろうか。
 すでに地方では、人口減により、学校が減り、病院が減り、飲食店も減った。書店はピークの半分以下、スタバもマックも減り始めた。地方都市の郊外にできたイオンモールのようなSCも、最近では不採算店からクローズされるようになった。
 地方都市では結婚式場がなくなったため、若者たちは結婚式を挙げなくなり、またお寺は檀家が減ったために消滅の危機にある。
 今後は、Eコマースが進み、流通は自動運転によるトラック輸送やドローンになるから、生活自体が困ることはない。ただし、人口減少はますます進む。
 ところで、日本の人口減少に逆らっている若者たちがいる。地方都市や大都市圏の郊外にいる「マイルドヤンキー」たちだ。ひと昔前、ヤンキーと言えば「暴走族」「不良」とほぼ同義だったが、いまは違う。
 マイルドヤンキーたちは、日本と郷土をこよなく愛し、地元を離れずに職に就き、同じよう育った仲間たちと暮らすことを好んでいる。彼らの特徴は、20歳そこそこで「早婚」「デキ婚」し、子どもには「キラキラネーム」をつけることだ。そして、子どもをたくさんつくる。
 したがって、博報堂ブランドデザイン若者研究所のアナリスト原田曜平氏は、著書『ヤンキー経済-消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)で、彼らを今後の消費の主体、日本経済の新しい担い手とした。
 厚労省のデータによると、高学歴女性ほど子どもをつくらない。母親の学歴に反比例して子どもの数が減っている。かつては「貧乏人の子だくさん」という言葉があった。貧困層は貧困ゆえに労働力を必要とし、そのいちばん簡単な解決策としてたくさん子どもをつくった。しかし、社会が成熟し、貧困層が減ると子どもは必然的に減った。
 ところが、マイルドヤンキーたちだけが、いまでも子どもをたくさんつくっているのだ。
 少子化のなかで、このような層だけがたくさん子どもをつくっていくとどうなるだろうか。残念だが、ヤンキーたちの多くが勉強嫌いか、勉強が得意ではない。知能程度も低い。彼らが好きなのは、LINEやツイッターなどのSNSやユーチーブの投稿動画だ。最近は、コンビニ店員を脅かして喜ぶ「おでんツンツン男」というユーチューバーも出現している。
 こうした子だくさんヤンキーたちが「大活躍」する未来を描いた映画がある。アメリカ映画だが、日本にも当てはまるので紹介したい。
 2006年にアメリカで公開され、わずか数週間で上映が打ち切られたB級コメディSF映画『IDIOCRACY(イデオクラシー)(日本タイトル『26世紀青年 ばかたち』)だ。完全にB級のホラ話で、笑いも寒いので、とても見るに耐えないが、よく考えるとホラ話とは言えない。
 物語は簡単に言うと、人工冬眠の実験台にされた平凡な男が500年後に目覚めると、アメリカには知能指数50以下のバカしかいなかった―ということ。
 主人公のジョー・バウアーズは、軍に勤務する平凡な兵士。アメリカ人の典型で、本など読まず、ジャンクフードばかり食べ、スポーツ好きで女好き。つまり、あまりにも平凡だったので、そこに目をつけられて軍の秘密プロジェクトの実験台にさせられてしまう。
 このプロジェクトというのは、冷凍カプセルで1年間の冬眠をし、その後の変化を見ようというものだった。しかし、責任者が売春容疑で逮捕されたことからプロジェクトは忘れられ、なんと彼は、500年間も冬眠してしまう。彼と一緒に一般人のリタという女性(じつは売春婦)も冷凍カプセルに入れられたが、2人は目覚めてびっくり仰天する。
 なんと、彼らが目覚めた2505年の社会は、あらゆる人々の知的水準が著しく低下した世界だった。人々は、誰ひとり本を読まず、朝から晩までトイレつきの椅子に座ってジャンクフードを食べながらすごしている。男はスポーツ、女はファッションにしか興味がなく、テレビではお笑いバラエティ番組とスポーツ番組しかやっていない。しかも、ニュースといえば、FOXニュースしか放送してないのだ。
 さらに、医者や弁護士もとんでもないバカばかりで、裁判は完全な見世物ショーになっていた。死刑になると、スタジアムでモンスター・トラックと戦わされるという有様だった。
 つまり、アメリカは「バカによるバカのためのアメリカ」が完全にできあがった「超おバカ社会」になっていた。ここでジョーは、社会の異常さに目覚めて病院に行く。すると、自己証明用の刺青がなかったことで警察に逮捕され、刑務所に送られる。しかし、刑務所で知能テストを受けると、なんと彼がこの世界では最高の知性を持っていることが判明する。これを知った元プロレスラーでポルノ男優上がりのカマーチョ大統領は、彼に世界の問題(食料危機、経済停滞、ゴミ問題)を解決するように頼んでくる―。
 エリート層、中間層が子どもをつくらず、おバカな低所得層だけが子どもをつくる。その先にある未来が、こうならないと、誰が言い切ることができるだろうか。
 映画のタイトル『イデオクラシー』は、「イデオ」(idiot:おバカ)と「クラシー」(cracy)の造語である。クラシーと言えば、デモクラシー(民主政体、民主主義はクラシーが主義の意味でないので誤訳)でわかるように、政治形態のことで、「デモ」(demo)は大衆だから、合わせて「民主政体」となる。だから、「イデオ」+「クラシー」は、「おバカ政体」(衆愚政治)となり、この映画は、現代の人口減社会の行き着く先が、衆愚社会であることを暗示しているとも言えるのだ。
 はたして、私たちの社会はこのような方向に向かっているのだろうか。あるいは、すでにそうなりつつあるのか。
 フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドは、かねてから「日本の最大の問題は人口減である」と言っている。またシンガポールの故リー・クアンユー首相は、日本があまりに保守的な政策を続けて移民を受け入れないことを批判して、「私が日本の若者だったら国を出る」と言っていた。
 さらに投資家のジム・ロジャーズ氏もこれまで、将来の日本の財政破綻は確実として、「若者なら国は出るだろう」と言ってきた。
 人口減により、この先、国家の借金はますます増え、そのツケはすべて若者たちに回される。ヤンキーたちまで逃げ出すようになったら、この国は本当に終わってしまうだろう。
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