🌁9〉─3・A─日本病。非正規雇用が何かすごく増えて、こんなんでいいのかなって身震いした。~No.28 

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 2023年9月5日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「「非正規雇用が何かすごく増えて、こんなんでいいのかなって身震いした」…ある「日経連キーマン」の「告解」
 NHKスペシャル取材班
 「終身雇用制」「年功序列」など日本独特の「企業依存型」雇用システムは、正社員にかかる高コストにより、バブル崩壊以降、日本企業を押しつぶしてきた。
 この高コストに耐えられなくなった日本企業が、「安価な代替労働力」として、急速に拡大したのが「非正規雇用」だ。その結果、中間層の賃金は下がり続け、日本の「中流」は壊滅寸前となった。
 これほど問題点が明らかにもかかわらず、「企業依存型」雇用システムは、なぜ放置されてきたのか。かつて財界四団体のひとつだった「日経連(日本経営者団体連盟)」の常務理事として政策の立案や提言を担っていた成瀬健生氏が、いま、証言する。
 【本記事は、NHKスペシャル取材班『中流危機』(8月23日発売)から抜粋・編集したものです。】
 非正規社員を活用する「雇用ポートフォリオ
 報告書で掲げた目玉のひとつが、「雇用ポートフォリオ」という新たな雇用システムだった(本書図参照 、『新時代の「日本的経営」』32ページより)。
 「非正規雇用が何かすごく増えて、こんなんでいいのかなって身震いした」…ある「日経連キーマン」の「告解」
 © 現代ビジネス
 新時代の「日本的経営」』の歴史的意義について研究してきた慶応義塾大学・八代充史教授いわく、そもそもポートフォリオとは、投資家の資金を運用する際に銘柄を分散させることで、「雇用ポートフォリオ」は、この手法を雇用形態に援用したものだという。
 日本の労働市場では、解雇権の濫用が規制されており、一度、正社員として雇用すると解雇することは難しい。したがって正規雇用だけでなく、パートタイマー、契約社員派遣労働者など様々な雇用形態を組み合わせるのが、将来の不確実性に対処するための有効な手段になるという考え方だ。
 1995年に日経連が発表した報告書では「今後は経営環境の変化に応じて、どのような従業員が何人必要かといった『自社型雇用ポートフォリオ』の考えに立った対応が必要だろう」としており、雇用形態として、1.終身雇用の正社員を想定した「長期蓄積能力活用型グループ」 2.専門能力を持つ研究開発職や企画職などの有期雇用を想定した「高度専門能力活用型グループ」 3.派遣社員やパートタイマーなどの有期雇用を想定した「雇用柔軟型グループ」の3つを提案している。
 当時、「非正規社員」といえば「農家からの季節工
 それまでの日本の企業経営では、雇用形態は正社員を軸に構成するという考え方が中心だったが、賃金を抑えられる「非正規社員」の活用も提言のねらいのひとつだったと成瀬さんは証言する。
 「(当時)ほとんど非正規社員はいなかったわけですからね。季節工だけでした。農家から援軍に来てもらうという非正規だったんですけども、本当に一般的な意味で(通年契約での)非正規社員を増やしていくということをせざるをえなくなった」
 © 現代ビジネス
 報告書では、いわゆる派遣労働の制度に関しても「原則禁止のポジティブリスト(特定の業種だけを許す)方式は適切でなく、原則自由のネガティブリスト(特定の業種だけを規制する)方式へと変換すべきであり、それが国際的な常識」として、政府に規制緩和に踏み切るべきだと要求している。
 「米国で派遣労働というのが、かなり盛んに行われているということで、私も調査に行きました。ただ、(非正規雇用の拡大は)苦しい円高の時代を乗り切るための、いわば緊急避難だというふうな考え方をしてたんです、実際はね」
 「こんなんでいいのかな、と身震いがした」
 その後、20年あまりで、劇的に増えた非正規雇用。今や全雇用の4割近くを占めるまでになり、中間層の賃金が上がらない要因のひとつになっている。ここまでの増え方は、「想定外」だったと成瀬さんはふりかえる。
 © 現代ビジネス
 「非正規社員が、日経連の報告書を出してから、急速に何か増えた感じがしまして、フォローアップの調査をやったんですけども、毎年毎年、何かすごく増えていく。本当に予想外。最初は、家庭の主婦とか学生アルバイトとかいろんな形の非正規を入れても、15%かそこいらだったのが、20%になり30%になり、それも約40%までいきましたからね。これはもう我々もちょっと身震いがしました。こんなんでいいのかなと……」
 成瀬さんも筆をとった「総論」の冒頭に、こう書き記されている。
 「経営環境が大きく変わる中で、日本的経営の運営面では変えなければならない問題はいくつもあるが、日本的経営の基本理念である『人間中心(尊重)の経営』『長期的視野に立った経営』は普遍的な性格をもつものであり、今後ともその深化を図りつつ堅持していく必要がある」(『新時代の「日本的経営」』3ページより)。
 人間中心の経営が崩れてしまった
 人間関係が経営の基本であるという哲学を表した「人間中心(尊重)の経営」と、設備投資や人材育成における「長期的視野に立った経営」。これらの2つの理念は、どんなに時代状況が変わろうとも「変えてはいけないもの」であり、たとえコストを削減しても、長い目でみた人材育成・能力開発は失ってはならないという日本の企業経営の矜持をこめて書いたという。
 © 現代ビジネス
 だが、成瀬さんの狙いとは裏腹に、その後、現実は逆方向へ進んでしまうことになったとふりかえる。
 「コストを減らして、少しでも利益が出るようにするのはいいけれども、そればかり考えていたのでは、社会的な存在としての企業がもたない。しかし実際には、人間中心の経営が崩れていってしまった……」
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 「正社員になれない」「自家用車を持てない」「持ち家に住めない」……「中流」の生活はもはや「高嶺の花」になった日本。なぜ日本の中流階層は急激に貧しくなってしまったのか? 国、企業、労働者は何ができるのか? NHKスペシャル取材班『中流危機』(8月23日発売)は、全国の中間層の現実を徹底取材し、その処方箋を探ります。
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 バブル崩壊後、経営難に陥った日本企業は、メディアがもて囃すグローバル派やボーダーレス派の経済アナリストや経営アドバイザーに従って、複数の部門を熟せるゼネラル人材である日本人社員を「リスク」としてリストラして単一専門職種の非正規社員契約社員を人材として採用した。
 有能で優秀な日本人社員は、将来性を放棄した日本企業に見切りを付けて退職し、高額で優遇してくれる外国企業に転職した。
 非正規社員契約社員さえリスクと考えた日本企業は、人の代わりにAIやロボットに任せ、頼った。 
 日本企業は、最先端技術や独創的発想と高度な知識を持った日本人若者に見捨てられ、破壊的イノベーションと継続的リノベーションをおこなう多様性を失った。
 つまり、日本、日本企業はメディアとグローバル派やボーダーレス派の経済アナリストや経営アドバイザーに騙されたのである。
 人間リスクとして被害を受けたのが、氷河期世代である。
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